接骨院の開業資金と売上の目安|自己資金・調達方法・黒字化のコツまで解説

「接骨院を開業したいけれど、いったいどれくらいの資金が必要なのだろうか?」そんな疑問を抱えている方に向けて、この記事では開業にかかる初期費用や運転資金の目安から、自己資金の準備方法、融資や補助金の活用、黒字化のシミュレーションまで、開業準備で押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。

接骨院の開業にかかる資金とは?

開業資金の全体像

接骨院の開業資金は、規模や立地、コンセプトによって大きく変動しますが、一般的には300万円~800万円程度が目安です。自宅開業やレンタルスペースを活用すればコストは抑えられますが、テナントを借りて内装を整える場合は500万円以上を見込むのが現実的です。

資金は大きく分けて次の3つに分類されます:

  1. 初期投資費用(設備、内装、備品など)
  2. 運転資金(開業後3〜6ヶ月分の家賃・人件費など)
  3. 予備費(想定外のトラブルやキャンペーンなどへの対応費)

必要な費用はどんな項目がある?

以下は、実際の開業時に必要となる主な費用項目です。それぞれの内容と相場を把握することで、計画的に準備を進めることができるでしょう。また、保険外サービスとしての位置づけで導入することで、売上の多様化にもつながるかもしれません。

費用項目内容例相場目安
店舗取得費敷金・礼金・仲介手数料・保証金など50万〜150万円
内装・設備工事費壁紙、床材、照明、エアコン、看板など100万〜300万円
備品購入費ベッド、リネン、タオル、など30万〜80万円
人件費(採用費含む)スタッフの給与・求人広告など30万〜100万円
広告費チラシ、WEBサイト、SNS広告、看板など10万〜50万円
各種手続き・申請費保健所・消防署への届出、開業届など1万〜10万円
開業後の運転資金家賃、光熱費、消耗品、人件費などの数ヶ月分50万〜150万円

開業費用の内訳|初期費用と運転資金の目安

接骨院を開業する際には、初期費用と運転資金の2つをしっかりと見積もることが重要です。開業前の準備が不十分だと、軌道に乗る前に資金が尽きてしまう可能性もあります。ここでは、それぞれの費用内訳と目安を詳しく見ていきましょう。

初期費用の内訳(内装・設備・物件取得など)

接骨院の開業に必要な初期費用は、大きく以下のような項目に分かれます。合計で500万〜1,000万円前後の初期費用がかかると見込んでおくと現実的でしょう。

  • 物件取得費:保証金・礼金・仲介手数料など。テナントによって異なりますが、50万〜150万円程度が目安です。
  • 内装工事費:待合室や施術室の仕切り、床や照明の設置など。150万〜300万円が相場です。
  • 設備費:電動ベッド、施術器具など。200万〜400万円程度必要になります。
  • 什器・備品類:パソコン、レジ、タオル、棚、受付カウンターなども含まれ、30万〜100万円程度を見ておくと安心です。
  • 開業準備費用:行政手続き、許認可申請、会計・法務相談費用など、20万〜50万円程度が想定されます。

運転資金の内訳(人件費・広告・光熱費など)

開業後しばらくは赤字になるケースが多く、数ヶ月~半年程度の運転資金を確保しておくことが重要です。主な運転資金の内訳は以下の通りです。開業後3〜6ヶ月分の運転資金として、200万〜400万円程度の確保を目安にしましょう。

  • 人件費:スタッフを雇う場合、月20〜30万円/人が一般的。受付や施術補助を入れると月50万〜80万円程度。
  • 広告費:チラシ、Webサイト、Google広告、SNS運用などで月5万〜20万円程度
  • 家賃・光熱費:立地にもよりますが、月10万〜30万円
  • 消耗品費・備品購入:紙類、タオル、消毒液など、月3万〜5万円程度

費用の目安|合計でどれくらいかかる?

接骨院の開業には、初期費用と運転資金を合わせて700万〜1,400万円前後の資金が必要になることが一般的です。資金に余裕を持って計画することで、無理のない経営スタートが可能になるでしょう。また、融資や補助金の活用も視野に入れて、専門家に相談しながら準備を進めるのがおすすめです。

項目費用目安
初期費用500万〜1,000万円
運転資金200万〜400万円
合計700万〜1,400万円

自己資金はいくら必要?ゼロからでも開業できる?

接骨院の開業を目指す際、多くの方がまず気になるのが「自己資金はいくら必要なのか」という点です。特に独立を考えたばかりの方にとって、資金面の不安は大きなハードルの一つと言えるでしょう。下記では、自己資金の理想額や現実的な水準、自己資金ゼロでの開業は可能かどうか、そして自己資金不足によるリスクについて詳しく解説します。

自己資金の理想額と実情

接骨院の開業資金は、立地や設備規模によって大きく異なりますが、一般的に300万円〜700万円程度が相場と言われています。そのうち、自己資金としては全体の2〜3割(100万円〜200万円程度)を用意するのが理想的です。

内訳としては以下のようなものが考えられます:

  • 内装・設備費:150〜300万円
  • 賃貸物件の保証金・礼金:50〜100万円
  • 施術機器・備品類:50〜150万円
  • 広告宣伝費・開業準備費:50〜100万円
  • 運転資金(3ヶ月分程度):50〜100万円

実際には、日本政策金融公庫や信用金庫の融資を活用するケースが多く、自己資金の全額を一括で用意する必要はない場合がほとんどと言えるでしょう。ただし、融資審査においては「自己資金をどれだけ貯めているか」が信用の指標になるため、一定額の自己資金はやはり重要です。

(出典: ジャパン柔道整復師会

自己資金ゼロでの開業は可能か?

結論から言うと、自己資金ゼロでの開業は可能ですが、非常にハードルが高いと言えます。日本政策金融公庫などでは、創業融資を受ける際に「自己資金ゼロ」でも審査を通過できる事例はありますが、これはごく一部に限られています。

自己資金が全くない状態では、以下のような点が問題視されやすくなります。

  • 経営に対する本気度・信頼性が疑問視される
  • 返済能力に不安があると判断される
  • 万が一の赤字時に対応する体力がない

そのため、仮にゼロでの開業を目指す場合でも、以下のような工夫が求められます。

  • 極限まで初期費用を抑える(居抜き物件の活用など)
  • クラウドファンディングや親族からの借り入れを検討する
  • 事業計画書の精度を高め、説得力あるプレゼンテーションを行う

開業の選択肢が狭まり、精神的・経済的な余裕が持てない状況は長期経営にとってリスクとなるため、最低限の資金は確保しておくことをおすすめします。

(出典: 日本政策金融公庫

(出典: Freee

自己資金が足りない場合のリスク

自己資金が不足している状態で無理に開業すると、以下のようなリスクが発生します。このようなリスクを避けるためにも、開業準備段階での資金計画は非常に重要です。無理のない範囲で自己資金を積み立て、融資とのバランスを取りながら、堅実な開業を目指しましょう。

  • キャッシュフローが圧迫され、経営が不安定に
    開業初期は売上が安定しないため、資金繰りの余裕がないと人件費や家賃の支払いに苦しむケースがあります。
  • 融資の審査に通りにくくなる
    自己資金の少なさは金融機関に不安を与え、融資審査が厳しくなる可能性があります。
  • 広告・集客に十分な予算を割けない
    開業後の集客が成功するかどうかは初期の宣伝活動に大きく左右されます。広告費を削りすぎると、知名度不足で来院数が伸び悩むリスクもあるでしょう。
  • 緊急対応ができない
    設備の故障や急な出費に対応できる余力がないと、患者さんの対応や営業に支障をきたします。

このようなリスクを避けるためにも、開業準備段階での資金計画は非常に重要です。無理のない範囲で自己資金を積み立て、融資とのバランスを取りながら、堅実な開業を目指しましょう。

開業資金の調達方法|融資・補助金・フランチャイズなど

接骨院を開業する際には、設備費・物件取得費・人件費など、多くの資金が必要になります。自己資金だけでは足りないケースも多いため、公的融資や補助金制度の活用は欠かせません。ここでは、主な資金調達方法として「日本政策金融公庫や銀行融資」と「補助金・助成金制度」の2つを解説します。

日本政策金融公庫や銀行融資の活用

開業資金の調達で最も現実的な方法の一つが「融資」です。中でも日本政策金融公庫は、創業者を支援するための融資制度が充実しており、接骨院の開業にも多く活用されています。実際の申請では、柔道整復師としての実績や地域性、想定する患者さんの数などが評価されます。面談時に自信をもって説明できるよう、事前準備をしっかり整えましょう。

ポイントは以下の通り:

  • 新創業融資制度:無担保・無保証で最大3,000万円まで借入可能(令和6年現在)
  • 自己資金が重要:最低でも開業費用の1/10〜1/3程度の自己資金があると審査が通りやすくなります
  • 事業計画書がカギ:売上予測や経営ビジョンを具体的に記載した事業計画書の作成が必須です
  • 信用金庫や地銀との連携:日本政策金融公庫と併用して、地元の金融機関との関係づくりも大切です

(出典: 日本政策金融公庫

補助金・助成金制度のチェックポイント

融資とは異なり、返済不要な資金が「補助金・助成金」です。開業に活用できる可能性がある制度をチェックすることで、自己負担を軽減することができます。

活用しやすい制度例:

  • 小規模事業者持続化補助金:販促費や開業初期の設備投資に使える補助金(最大50万円〜100万円)
  • 地方自治体の創業支援制度:市区町村が独自に提供している助成金・利子補給など
  • 雇用関係の助成金:スタッフを雇う場合、厚生労働省の「キャリアアップ助成金」なども対象になることがあります

申請時の注意点:

  • 補助金は事前申請が必要なケースが多く、購入や契約後では対象外になることが多いです
  • 審査には時間がかかるため、スケジュールを逆算して準備する必要があります
  • 使途が明確でなければ不採択になることもあるため、導入設備やサービスの具体性が重要です

補助金は国や自治体の予算枠に左右されるため、常に最新情報を確認しておくことが重要です。各地域の商工会議所や行政窓口に相談することで、意外な支援制度が見つかることもあります。

(出典: 全国商工会連合会

(出典: 厚生労働省

開業資金を抑える5つの工夫とは?

接骨院の開業には一定の資金が必要ですが、工夫次第で初期費用や固定費を大幅に抑えることが可能です。ここでは、無理のない経営をスタートするために実践できる「5つのコスト削減法」をご紹介します。

中古機材やDIYで初期費用を削減

新品の施術ベッドなどは高額になりがちですが、業者オークションや専門の中古販売店を活用すれば、状態の良い機材を安価で手に入れることが可能です。

また、内装や什器類はDIYで整えることも検討しましょう。棚やカウンターなどはホームセンターやネット通販を利用して低予算で整備できます。自分で手を加えることで、自院への愛着も湧き、患者さんにも温かみのある雰囲気を提供できます。

スモールスタート(自宅開業・レンタルサロン)

開業直後は来院数が安定しないことも多いため、固定費を抑えられる「スモールスタート」は非常に有効です。

たとえば自宅の一室を活用する、あるいはレンタルサロンを利用することで、テナントの初期費用や高額な月額家賃を回避できます。特にレンタルサロンは、立地の良い場所でも短時間・少額で利用できる場合があるため、患者さんの層の反応を見るテスト開業にも向いています。

無駄のない集客スタートで運転資金を節約

開業時の集客でやりがちなのが、広告費をかけすぎてしまうことです。効果が出るか不確かな媒体に一気に投資するのではなく、まずは無料・低コストで始められるSNSやGoogleビジネスプロフィールを活用しましょう。

口コミ・紹介を活用したローカルマーケティングや、近隣へのポスティングなども効果的です。ターゲットを絞り、戦略的に集客を始めることで、限られた運転資金を無駄なく活かせます。

固定費を見直す視点を持つ

開業後の経営安定に欠かせないのが「固定費の見直し」です。家賃・光熱費・通信費・保険料など、毎月必ず出ていくコストに注目しましょう。

たとえばインターネット回線はプランの見直しで月額数千円の節約ができることもありますし、電気契約を見直すだけで基本料金を下げられるケースもあります。開業当初から「固定費を最小限に抑える意識」を持つことが、長期的な経営の安定につながります。

売上シミュレーション|黒字化するための収支バランス

接骨院の経営を安定させるためには、収支バランスを明確に把握し、黒字化を目指すシミュレーションが欠かせません。下記では、日々の来客数と単価から収益を逆算し、月商の目安や損益分岐点を確認します。さらに、赤字を防ぐための運営ポイントまで詳しく解説していきます。

1日の来客数と単価から逆算する

まずは、1日の来客数と単価から「理想の売上」を逆算してみましょう。

仮に、施術の単価を4,000円と設定した場合、

  • 1日10人の来客であれば、日商は4万円
  • それを月20営業日で換算すると、月商は80万円になります。ここから家賃・人件費・広告費・備品費などの経費を差し引くことで、純利益の見通しが立てやすくなります。このシンプルな逆算によって、必要な集客数や単価設定の目安が明確になり、経営の方向性を判断しやすくなります。

月商の目安と損益分岐点

損益分岐点とは、「赤字にも黒字にもならないライン」を指します。接骨院の場合、家賃やスタッフの給与、保険請求業務に関わるコストなど、固定費が比較的高めになりがちです。

【例:月の経費が60万円の場合】

  • 単価4,000円で1日10人の来院 → 月商80万円
  • 経費60万円を差し引いて、月商20万円(黒字)
  • 逆に、月商が60万円を下回ると赤字になります 

したがって、最低でも1日8人以上の来院を目指す必要があるといえるでしょう。損益分岐点を意識することで、無理のない集客戦略や価格設定の根拠が明確になり、経営の安定感が高まります。

赤字を避けるための運営ポイント

黒字化を継続的に実現するには、単に「数値」を追うだけではなく、運営の質にも注目することが大切です。特に、保険施術中心の院では自費メニューの設計と導入がカギになります。自費による収益を安定させることで、経費変動にも柔軟に対応できる経営体制が整います。

以下のようなポイントを意識することで、無駄なコストや集客ロスを防ぎやすくなります。

  • 回数券や自費メニューの提案で単価アップ
  • 地域に合った営業時間や定休日の設定
  • 予約システムやLINEなどのツール活用で来院率向上
  • 広告費の最適化(チラシ・ポータル・SNS広告の見直し)
  • 離脱防止のための接遇・再来院フォローの徹底

まとめ|接骨院開業の成功のカギ

接骨院の開業は、多くの人にとって「夢の実現」です。しかし、理想だけで突き進むと、想定外のトラブルや収益面での不安に直面することもあります。成功するためには、しっかりとした準備と戦略的な視点が欠かせません。ここでは、開業を目指す方が押さえておくべきポイントを3つの視点から整理し、安定した経営を目指すためのヒントをお届けします。

開業前に押さえておくべき3つの視点

  1. 市場調査と立地選びの重要性
    競合が多いエリアに無策で出店するのは非常にリスクが高いです。まずは地域の人口動態、ニーズ、競合の価格帯や提供サービスを調査しましょう。また、駅近や車通勤の利便性など、立地の条件も集客に大きく影響します。 
  2. サービスの差別化とメニュー構成
    「他と何が違うのか」を明確に伝えることが、新規患者さんの獲得とリピーター化につながります。ターゲット層に合わせて独自性のある施術メニューを検討しましょう。 
  3. 法令・届出の確認と資金計画
    保健所や消防署への届出、必要な許可申請などを事前に確認しておくことがトラブル回避の第一歩です。また、開業資金の使い道と、黒字化までの見込みを立てておくことで、安心して開業をスタートできます。

安定収益を得るための準備と工夫

  • 顧客管理とリピート戦略
    カルテやLINEを活用した患者さんのフォロー、誕生日特典や施術後フォローなど、「また来たくなる工夫」を仕込みましょう。
  • 固定費の見直しと価格設定
    施術単価の設定は、原価・労働時間・地域の相場を踏まえて慎重に決定します。また、必要以上に広い店舗や高額な設備投資は避け、身の丈に合った運営を意識しましょう。
  • 集客チャネルの多角化
    チラシ・SNS・Googleビジネスプロフィール・ホットペッパーなど、複数の集客手段を掛け合わせることで、閑散期の来客減少をカバーします。

不安を解消して一歩踏み出すために

開業に不安はつきものです。しかし、その不安の多くは「情報不足」と「準備不足」から来ています。まずは信頼できる経営者やコンサルタントの意見を聞くこと、さらに開業セミナーや体験談を通じて知識を深めることで、不安は「備え」に変わります。また、「自院が社会にどんな価値を提供するのか」という理念を明確に持つことで、ブレずに判断できるようになります。情熱と冷静さをバランスよく持ちながら、理想の自院づくりを進めましょう。

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